紙を使用した筆記試験が主流ではありますが、CBTという試験方法の導入も近年では増えてきています。しかし名前だけは知っていたり、筆記試験との違いはなにかなど、詳しくは知らない方もいるでしょう。今回はCBT試験についてや、ほかの試験との違いを紹介するので、ぜひ参考にしてください。
CONTENTS
そもそも「CBT」とは?
詳しく説明していきます。
CBTとは?
CBTはComputer Based Testingの略で、コンピュータを使用した試験方式です。海外発祥の試験方法で、蓄積しておいた問題の組み合わせを変えたり、別の問題と入れ替えたり、受験者ごとに異なる出題をしながら、不正行為の対策をしやすくします。
紙よりもコンピュータの方が、採点の手間や合否の結果を通知する時間を短くでき、音声や動画を活用した幅広い問題も出題しやすくなるのが特徴です。セキュリティ面も非常に高いため、問題が外部に流出する心配もありません。
通常の試験の場合、受験票や問題用紙など、大量の紙を使用する必要がありますが、コンピュータなら紙を使用する頻度が大幅に減るため、コスト削減にも繋がります。台風などの災害や天気に左右されずに受験ができ安心です。
また、日時や会場の急な変更もしやすいので、融通が利きやすいです。ただ試験会場の規模が大きくなると、端末確保やキーボードなどの操作技術の差が成績に影響を及ぼす可能性もあるため、改善が必要な部分もあります。
CBTとPBTの違い
PBTはPaper Based Testingの略で、慣れ親しんだ紙の問題用紙と解答用紙を使用し、最近ではマークシート式の試験も増えてきています。コンピュータを使用するCBTと違い、PBTは紙を使用するので、カラーインクを使用した問題用紙はコストが高くなったり、スピーキングテストを行う語学試験では、同時に行いにくくなったりなどが課題です。
全国一斉に開催するPBTは、複数の会場が必要になるため、CBTと比べると一年に行われる回数が少なくなります。
CBTとIBTの違い
IBTはCBTと同じくインターネットを利用した試験ですが、試験会場に行かなくてはならないCBTとは違い、IBTは私物のパソコンで、いつでもどこでもテストを受けられます。
CBTは受験や試験会場などを予約しなくてはなりませんが、IBTは予約をする必要がなく、自分の好きなタイミングで日時や場所を選べるのが特徴です。今では、タブレットやスマートフォンでも受験ができる環境も増えています。
CBT試験の導入が増加してきている理由は?
理由をいくつか紹介します。
出題方法が幅広い
スピーキングが必要な語学試験や動画を使用した試験には不向きなため、今までの試験は筆記や文章問題、図やイラスト等を使用した問題が多い傾向でした。コンピュータを使用するCBTなら、音声も使用できるためマイクで音声解答も可能です。
また、動画も使用できるため、スピーキング問題や複雑な図やイラスト、カラー問題を活用した問題も出題しやすいです。マークシート方式や短文の解答など、出題問題の幅が広がれば、筆記試験以外の視点から受験者の能力を知るきっかけになります。
受験がしやすい
通常の試験なら、試験日や開始時間、試験会場は決められているため、変更できない場合が多いです。体調不良になってしまったり、台風などの自然災害によって会場に行けなくなったりなど、試験を受けられなくなる可能性もゼロではありません。
CBTなら試験日や開始時間、試験会場も受験者が選べて、一年を通して各地で行われるため、もし試験日当日に予定が入っても変更が可能です。
セキュリティ面が安全
紙を使用した試験問題は、解答用紙の紛失や持ち出しにより、外部に情報が流出するリスクが高くなります。近年では、さまざまな方法を駆使してカンニングをする受験者もいるため、不正行為を未然に防ぐための対策も必要です。
CBTはコンピュータを使用した試験方法なので、試験内容を外部に持ち出されるリスクが減ります。問題はインターネットで暗号化し送受信し、受験者がそれぞれ別の問題を回答するため、カンニングそのものを防ぐ効果があるのもひとつの魅力です。
電子化しやすい
政府により、2026年までに公文書の管理方法を紙ではなく、電子化へ移行しようという動きが進められています。解答用紙や問題用紙などを電子化し、コンピュータによる試験方法へ移行する動きが試験業界にも広まってきました。
受験後にその場で回答結果を電子保存でき、電子化により受験者は合否の発表を待たなくてよくなります、また、ペーパーレス化をすれば、主催者は試験準備や合否の通知などの手間をかけずに済みます。
パソコンなどへ入力した瞬間に電子化されているので、受験者のあらゆるデータや解答結果をその場で保管できる手軽さも便利です。
CBT試験導入のデメリットも知っておこう
デメリットな部分も紹介します
パソコン操作に慣れていないと不便
CBT試験はオンラインで行われます。日頃からパソコンを使用している生徒なら、なんの支障もなくスムーズに進められるでしょう。しかし、パソコンをあまり使用した事がない生徒だと、キーパッド入力やマウスの操作に戸惑ったり、聞き慣れない用語に慌ててしまって、問題を解ききれない可能性も無いとは言えません。
不慣れなパソコンのせいで、せっかくの実力が出せないとなると、非常に悔しい思いをするでしょう。CBT試験は、レパートリー豊かな問題を出せる一方で、紙の試験とは違う不便さも持ち合わせています。
みんなが平等に、制限時間内に問題を解ききれる配慮も必要になります。事前に動画などで操作方法などを予習できるようにしたり、パソコンに触れる機会を作るなど、生徒へのサポートも考えるようにしましょう。
試験用紙に書き込みができない
コンピュータを使用して試験をするため、一般的な紙を使用する試験とは違い、紙に書き込みができません。数式をいくつか書いて答えを出したり、答えを導き出すために候補を書いてみたり、漢字が合っているか試し書きしてみたり、ちょっとしたメモ書きや思いついた単語を書き連ねるなど、こういった動作ができません。
そのため、頭の中を整理しながら問題を解くという事ができなくなり、問題を解くまでの動作も限定されます。頭の中ででしか答えが出せないため、別の答えがあるのではないか、別の解き方があるのではないか、忘れている単語などは無いかなど、確認作業が出来ないのは問題を解くのに多少なりとも影響を及ぼしそうです。
教育業界ではDX推進が進んでいる
文部科学省が提示しているGIGAスクール構想や学習eポータルの提供などにより、教育業界でのDX化が進んでいます。その証拠の一部となるのは、株式会社SHIFTによる実態調査です。同社が2022年1月〜6月の期間に実施した調査によると、73%の学校ではDX推進が進んでいるという結果が明らかになりました。
実際に取り組まれているDX推進のための施策としては、授業のオンライン化・インフラ整備という回答が同調査結果の過半数を占めています。完全にDX化されているとはまだいえない現状ではありますが、できることから徐々に始めているといった印象を受けるのではないでしょうか。
教育業界のDX化を実現させるには、学校〜自宅間のインフラ整備やセキュリティ対策など、事前に行うべき準備が数多く存在します。準備のためには人手も必要であり、生徒の保護者の協力も欠かせません。
教育業界のDX化を進めるべき理由のひとつに「生徒一人ひとりに合わせた教育の実現」が挙げられます。生徒一人ひとりに寄り添った教育を行うことで、学びの楽しさや探究心を養えます。そのため、DX化は今後も教育業界を担う重要なプロジェクトとなるでしょう。
学校そして生徒含めた家族がDX化が必要である理由を再認識し、これからもできることから進めていくことが重要になっていくのではないでしょうか。
DX推進で紙テストからオンラインへの移行が進んでいる
紙を使用した従来のテスト形式から、オンライン形式へ移行するケースが増えつつあります。オンライン化への移行が進んでいる証拠として、有名な検定試験や国際試験のオンライン化やオンライン化に対する教員・保護者からの厚い支持が挙げられます。
まず、有名な検定試験のなかでオンライン化されているものとしては、日本漢字能力検定・実用英語技能検定・秘書検定・世界遺産検定などです。また、海外での事例としては、PISAと呼ばれる国際的な学力到達度調査がテストのオンライン化における代表例です。
PISAは、2015年からCBTへと移行しています。理数系の国際的試験であるTIMSSも、2019年からCBTが一部導入されました。
そして、CBTへの移行は教員や保護者の方々からも支持を集めており、今後も徐々にオンライン化が進んでいくことが期待されています。基礎学力研究所が2022年7月14日に公表した調査によると、約8割の教員がCBTを実施したいと回答していることが明らかになりました。採点業務の負担が軽減されることや、生徒ごとの学力の把握がしやすくなることにメリットを感じている教員がとくに多いという結果も出ています。
一方、保護者からの支持は、イー・ラーニング研究所の調査で明らかになっています。2022年6月13日に発表した調査結果によると、約9割の保護者はテストのオンライン化に賛成していることが分かりました。理由としては、どこでもテストを受けられる点やテスト後のフィードバックを受けやすい点が多く挙げられています。
しかし、反対意見も少なからず存在しています。反対意見としては、カンニングなどの不正行為やインターネット環境に対して懸念を抱いているような内容が多いです。
また、テストのオンライン化を支持している保護者が多いにもかかわらず、CBTの認知度は3割程度でした。ITリテラシーに対してはまだ低いと回答している保護者も過半数を占めています。そのため、テストのオンライン化を今後さらに進めるには、保護者のCBTに対する認知やITリテラシーの向上が課題点の一部となるでしょう。
CBTをはじめとするテストのオンライン化に魅力を感じている人は多く、有名な試験から徐々にオンライン化されつつあるという現状があります。この現状はテストのオンライン化に対する糧となり、DX化の一環として、これからも徐々に普及していくでしょう。
まとめ
筆記試験がまだまだ一般的なため、コンピュータを活用した試験方法は馴染みがないかもしれません。紙を使用した場合、問題用紙の管理や採点などは人が行うため、手間や時間がかかったり、管理をする人の確保なども必要になります。
そういった時間や人員を削減する目的として、CBT試験の導入も増えてきました。紙を使用した試験とは違い、音声や動画、図形の活用が簡単にできるため、出題方法のレパートリーが増えますし、筆記以外の解答を参考にすれば、受験者それぞれの実力や得意な部分を明確にしやすいです。
特に気になるセキュリティ面も非常に高いため、問題や解答の流出をしっかりと防げますし、コンピュータを使用しオンラインで行うため、場所を選ばずどこでも試験が受けられる手頃さもあります。