筆記ではなく、パソコン操作で受験するCBT試験。近年導入する団体が増えていますが、どうしてなのでしょうか。近年デジタル化が急速に進んでいるため、試験もデジタルになるのは自然な流れかもしれませんが、どんなメリットがあるのかが気になります。
CBT試験はコストや手間を省ける試験を実施する側のメリットや、会場や日程の選択肢が多い受験者側のメリットと、双方にとってメリットがあり導入する団体が増えています。また、公正な試験の実施も、CBT試験の方が容易に環境の準備ができます。
そこで今回は、CBT試験の6つのメリットを解説します。また、CBT試験特有のデメリットや、CBTの進化型「CAT」についてもそれぞれ紹介します。
CBT試験の活用傾向
CBT試験は近年、さまざまな団体の試験に導入されている試験です。CBT試験は会場に用意されたパソコンを使用して受験します。CBT試験は採点もシステムで行うため、マークシート方式や解答がシステムで判別しやすい内容の資格や検定試験で多く採用されています。
しかし、最近では合否をともなうような大学入試や国家試験でも活用されるようになりつつあります。
CBT試験のメリット
CBT試験には一般の筆記試験にはない、多くのメリットがあります。以下で6つのメリットを紹介します。
コスト・手間を省ける
CBT試験では紙の問題用紙や解答用紙は不要なため、用紙を用意するコストや準備にかかる人件費を大幅に削減可能です。
筆記試験であれば問題用紙と解答用紙などを印刷し、不備がないか確認する手間がかかります。しかし、CBT試験であればパソコンを設置するだけで試験の準備は完了です。
すぐに試験結果が出る
CBT 試験は、終了後すぐに解答データが転送されます。あらかじめ正誤データがインプットされているため、短時間で大量の採点が可能です。筆記試験では、回収後の採点とその後の集計作業まで人の手で行っている場合が大半のため、結果が手元に届くまで一定の期間がかかります。
一方、CBT試験を活用すれば、すぐに通知を届けられるメリットがあります。また、企業が実施する適性検査などで活用している場合は、検査結果を元に、スピーディーに面接まで進めることも可能です。
データ分析に活用できる
従来の筆記試験でもデータ分析は可能ですが、分析するのに時間かがかかり、活用できるようにするまでは多くの時間が必要でした。しかし、CBT試験であれば結果はデータで一元管理されているため、集計はもちろん特定条件に当てはまるデータを抽出することも容易です。
また、筆記試験では得られない細かなデータも、CBT試験なら得られます。各問題にどれくらいの時間かかったのかなどのデータは、CBT試験でしか取得できません。
試験に関わるリスクを減らせる
CBT試験なら、筆記試験で考えられるさまざまなリスクを減らせます。筆記試験では問題用紙や解答用紙を人が扱うため、紛失のリスクがあります。また、問題は事前に作られて保管しているため、漏えいのリスクも伴います。
しかし、CBT試験なら問題や解答内容はセキュリティ対策されているコンピューター内で管理されているため紛失リスクはなく、漏えいリスクもかなり軽減できます。また、パソコン端末には開始直前にダウンロードして実施するため、試験前に問題内容を入手することは困難です。
替え玉受験やカンニングも試験で見られるリスクです。CBT試験を導入している試験によっては顔認証システムを採用しています。受験前にパソコンで顔認証をし、本人とみなされないと受験できないよう、替え玉受験を防止しています。
また、カンニングは不正を感知できるシステムを導入すれば防止可能です。
出題方法が多様
CBT試験であれば、音声や動画による出題も可能です。従来の筆記試験では、紙上で出題できる文章問題や図形問題、一部音声を流すリスニング問題くらいでした。しかし、CBT試験なら使用するパソコン内で音声による出題もでき、動画での出題も可能です。また、図形を移動させるなど、操作を必要とする問題も出題できます。
受験者の実力を確認するテストなど、文章による問題だけでは図れなかったものも、CBT試験を活用すると、正確な判断が可能です。
これらの6つのメリット以外にも、感染防止対策をしやすいメリットもあります。CBT試験は大規模な試験会場ではなく、小規模なテストセンターで行われることが大半です。そのため、感染症流行時期の試験でも、少人数のCBT試験であれば大規模の筆記試験よりも実施しやすい傾向にあります。
試験会場や試験日程の選択肢が多い
テストセンターで行うCBT試験は、筆記試験と同じように会場に足を運ぶ必要があります。しかし、CBT試験のコストや手間、人件費を省けるメリットから、筆記試験よりも多く試験会場を設けられます。これまでは、自宅から近い試験会場がなく受験を断念していた方でも、CBTを導入した試験なら受けられるケースも出てきます。
また、会場設置が容易なCBT試験は、ひとつの会場でも複数の日程が用意されていることも多いため、試験日も選択可能です。
CBT試験のデメリット
CBT試験はパソコン操作に慣れていなければ不利になります。パソコンに不慣れな方は、解答に時間がかかったり選択を間違えたりする可能性があるためです。
また、塾で行う模擬試験を実施した場合、テストセンター会場では本番のような緊張感や雰囲気では行えません。CBT試験はパソコンを一定数用意する必要があるため、1000人規模の大きな試験を実施するのは困難です。大会場で行う緊張感漂う本番では、いつもの実力が発揮できないことも少なくありません。
模擬試験はCBT試験と筆記試験の併用がおすすめです。試験対策のためにも、定期的に模擬試験を受けることは必要ですが、毎回会場に足を運ぶのは大変です。両方を併用することで、本番のような緊張感に慣れつつ、時間を有効活用できます。
ほかにも、試験監督者にはIT知識のある人物を配置しなければなりません。トラブルが発生しても、迅速に対応できる技術力も必要です。ときにはシステムの確認が必要になるケースも考えられるため、このような人物を会場ごとに確保しなければならない点はデメリットといえます。
CBTの進化型「CAT」
CBTはテストを個別化する活用方法もあります。CBTの進化型としてCATがあります。CATとは「Computerized Adaptive Testing(個別最適型テスト)」です。
受験者の理解度に合わせて、出題問題を変更できます。受験者ごとに最適な問題を出題できるため、TOEICでも採用されている出題方式です。CATは通常よりも少ない問題数で、正確に能力を測れるメリットがあります。
また、海外ではCBTのメリットを活かして、テキストの読み上げ機能、ユニバーザルデザインの採用、マウスではなくキーボードで解答可能にするなど、支援が必要な学生のために活用されています。
まとめ
CBT試験は問題用紙や解答用紙の準備が不要、試験の事前準備が簡素的にできるため人件費が削減できるなど、コストや手間を省けるところがメリットです。また、筆記試験よりも結果が早い特徴があります。さらに、解答データは一元管理されているため、データ分析も容易です。
CBT試験なら、試験に関わるリスクも減らせます。試験内容はすべてパソコン上で管理されているため、紛失リスクはありません。また、用紙の保管よりもセキュリティを強化できるため、漏えいリスクもかなり軽減できます。
そのほか、会場を設置しやすいため実施場所や日程を選択できるなど、これまで受験にハードルを感じていた近くに会場がなかった方にとっては大きなメリットです。
このように、試験実施に対するコスト・手間・リスクが少ないCBT試験は、今後主流の試験方法になる時代も遠くありません。