コロナ禍で注目されているCBT試験が増加している背景

公開日: 2024/04/15

新型コロナウイルスが私たちの生活にもたらした変化は多岐にわたります。その中のひとつが受験方法です。今回紹介するCBT試験は、Computer Based Testingの略称で、全国47都道府県に300以上あるテスト会場におもむき、パソコンを使って受験します。今回はこのCBT試験がなぜコロナ禍で注目されているのか、試験のメリットデメリットと合わせて詳しく解説します。

コロナ禍によりCBT試験が急増した理由

CBTとはComputer Based Testing(コンピュータベースドテスティング)の略称で、名前の通りコンピュータを使った試験方式のことです。これまで受験方式の主流だった筆記具を用いて紙媒体のテストを受ける「筆記式(PBT:Paper Based Testing)」と異なり、PCモニターに表示されるテスト問題に対して、マウスとキーボードを使って回答します。

両者の共通点は、受験者がテスト会場におもむき試験を受けることです。一方の相違点は、試験会場の規模や試験実施回数です。PBTは年一度など少ない頻度で大規模に開催されることに対し、CBTは年に何度も小規模な会場で催されます。

CBTがコロナ禍で急増した理由のひとつがここにあります。みなさんもご存知の通り、コロナ禍とは2019年末から世界的規模で猛威をふるった新型コロナウイルス感染症の流行による災難や危機的状況です。

コロナ禍では感染予防のため、マスク着用や屋内の定期的な換気、手洗いや手指消毒が推奨されましたのは記憶に新しいのではないでしょうか。飛沫感染や接触感染の可能性があるため、他者となるべく身体的距離(ソーシャルディスタンス)を確保することも重要視されました。

PBTとCBTは、はいずれも試験会場で受験するという共通項と、試験会場の規模や試験開催頻度に大きな違いがあることは既に紹介しましたが、その理由は受験に公平性をもたせることにあります。試験は受験者に不平等が生まれないよう、期日と時間を統一して全国一斉に開催します。

出題問題を統一することと、問題の漏洩を防ぐためです。試験の難易度に合わせて問題をデータベースから抽出して出題するCBTに比べて、PBTは試験のたびに問題を作成します。

また採点や集計が一瞬で終わるCBTとは異なり、試験問題の採点・集計にもそれなりの時間と労力がかかります。そのため年に複数回開催するのは困難です。

試験回数が少なくなると、人気の高い試験では1回に集まる受験者が多くなります。大規模な試験では一つの会場に大勢の受験者とスタッフが長時間滞在することになり、コロナ禍で推奨する予防策の条件を満たせないという問題が発生します。

そのため、コロナ禍が猛威を振るった2020年には多くの試験が開催延期・中止の措置をとることになりました。一方CBTは全国各地にテスト会場があり、頻繁に試験を開催しています。

これにより受験者を時期と地域で分散させられ、テスト会場の多くでは10名程度の小規模での開催がとられているケースが多く、コロナ禍における予防対策(密集・密接・密閉状態の回避)が行き届く結果となりました。

パンデミックの状況下においても、PBTに比べて試験が中止になるケースが少ないことが世間の注目・高評価を受け、現在のCBTの急増へとつながったのです。

CBT試験のメリット

CBT試験のメリットとしてまず挙げられるのは、受験申し込みから試験の実施・合格通知に至るまで、すべての試験行程がインターネット上で完結することです。受験者は申込用紙の取り寄せや送付といったアナログの煩雑な手続きが不要になります。

また主催者側も受験票や合否通知の送付や問題の印刷、会場・試験官の確保といった負担を減らせます。受験者側にとっては更に3つのメリットがあります。ひとつ目のメリットは、受験希望者が1年を通じて好きな日時・曜日を選び、好きな場所で受験できることです。

PBTとは異なり試験開催日が固定化されていないため、仕事をもつ社会人でも受験しやすくなります。また、複数の選択肢から会場を選べるので、最寄りの会場を選ぶことで受験のための移動時間・費用といったコスト削減効果もあります。

また、受験者を時期と地域で分散させられるため、パンデミック発生時には感染リスクを下げるという社会的利益も兼ねています。二つ目のメリットは受験の際の解答時間を短縮できることです。

筆記式の場合、マークシートを塗りつぶしたり消したりといった作業が必要ですが、CBTの場合はマウスをワンクリックするだけで解答を変更できます。解答時間を短くできるので、見直しのための余裕をもてます。

最後のメリットは、試験終了後すぐにその場で採点結果を確認できることです。合否判定ではありませんが、得点を把握することで、さらなる就職試験や資格試験を控える受験者にとっては、迅速かつ効果的に次のステップに進む判断材料となります。

CBT試験のデメリット

一方CBT試験にはデメリットもあります。たとえば、パソコン操作に慣れていない人にとってはハードルが高いと感じられる点が挙げられます。既に教育課程にパソコン操作が組み込まれている若年層の受講者であれば問題ありませんが、パソコン操作と縁がない人にとっては「CBT試験」というだけで拒絶反応を起こしてしまう可能性もあります。

また、まったくの未経験でなくても不慣れなため、操作ミスを起こしたり、マウスやキーボードの操作に時間がかかったりしてタイムロスする可能性もあります。この場合、パソコン操作に慣れている受験者に比べて不利となってしまいます。

ただし試験によっては筆記式と並列で開催されているケースもあるので、まずは対象試験について調べてみることをおすすめします。他にもPBTとは異なり試験問題を持ち帰れないことがデメリットに挙げられます。

CBTは問題出題・受験・採点すべてがコンピュータで一元管理されているシステムです。ペーパーレスのため、問題用紙も解答用紙も存在しません。PBTでは持ち帰ることが可能だった試験問題を持ち帰れないため、帰宅後に試験問題をチェックしたり、答え合わせできなかったりすることに不便さを感じる可能性があります。

また、解答や正解等の開示もないため、どこが不正解だったかを把握できず、再受験する際に対策が立てにくいのも難点です。

CBT試験を導入している資格試験

CBT試験を導入する資格試験は年々増加を辿っています。ITパスポートやインターネット検定といったPCスキル試験、マーケティング検定、経理・財務スキル検定(FASS検定)、アマチュア野球公認審判員などの試験でも導入されています。

CBTのみではなく、CBTとPBTの両方を実施している資格もあります。日本漢字能力検定(漢検)や実用英語技能検定(英検)、電気工事士、日商簿記検定、秘書検定、世界遺産検定などでは特定の級数でCBTとPBTの両方式に対応しているので、CBT方式に抵抗がある人やパソコン操作に自信がない人は従来のマークシート式での受験も可能です。

また、2023年10月には全国の小学6年生と中学3年生を対象とした理科の全国学力テストを2025年にCBT化する素案を文部科学省が公表しています。CBT試験を導入する資格試験は、今後も範囲拡大が進んでいくことが予想されます。

まとめ

コロナ禍で注目されているCBT試験について、増加の背景や導入のメリットとデメリット、既にCBT試験を導入している資格試験などと合わせて解説しました。CBT試験は従来の筆記試験(PBT)とは異なり、コンピュータを使って受験する方式です。受験の申し込みから合否発表までインターネットを通じて完結することや、PBTに比べて試験開催の頻度が高く、小規模な試験会場で受験できることが特徴です。コロナ禍でも感染拡大を予防しながら試験できることが評価され、CBT試験の導入増加につながりました。CBT試験はIT関連分野で導入が進んでおり、漢検や英検、日商簿記検定、秘書検定、世界遺産検定でもPBTと並列して受験可能になっています。

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