法律系資格の最高峰として有名な司法試験は、現時点で筆記試験のみ対応しています。採点の手間や採点ミス、受験者の書字の明瞭さや表現の違いなどで評価が分かれることもあり、公平性が十分とはいえません。CBT形式の導入によりこれらの課題の解決が期待できます。この記事では、司法試験にCBT形式が導入される時期について解説します。
司法試験におけるCBT試験の導入の時期
コンピュータを採用した試験の申し込み・採点・結果通知する仕組みをCBT(Computer Based Testing)形式といいます。
CBT形式では、受験者は試験会場を訪問し、会場に用意されたパソコンを用いて受験します。試験会場は全国に複数個所用意され、試験の候補日も多いことから、多忙な方でも柔軟にスケジュールを組みやすく、受験のしやすさが特徴です。
また、インターネットにつながる環境さえあれば、誰でも利用できることも特徴です。
筆記試験と比較した場合のメリット
CBT試験は筆記試験と比較して、効率的な採点と迅速な結果通知を受けられることが受験側の魅力です。
これはコンピュータが自動で試験結果を採点するためです。筆記試験では受験者の書字の明瞭さや採点ミスなどによって、正しい結果を得られないリスクもありましたが、CBT形式ではこれらのリスクは発生しません。
また、即時採点できるため受験生は試験結果をすぐに取得でき、次のステップに進みやすくなります。
現在CBT形式を導入している資格試験
現在CBT形式を導入している資格試験には、漢字検定や英語検定、秘書検定、MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)、ITパスポート、日商簿記3級などがあります。
子どもから大人まで幅広い年代を対象とした定番の資格や、ビジネスの基礎となる知識を問われる資格まで、CBT形式を導入しています。
司法試験もCBT形式の導入が検討されている
このようにさまざまな分野に渡る資格・検定試験へCBT形式が導入されている中、司法試験にもCBT形式の導入が見当・予定されています。
これまで司法試験は、マークシートと記述式のペーパーテストで実施されてきました。しかし、令和5年に法務省が掲げた「デジタル社会の実現に向けた重点計画」において、司法試験でもデジタル化を推進するため、CBT形式を採用することを公表しました。
現時点では、令和8年(2026年)度からCBT形式が導入される予定です。また、前年にあたる令和7年(2025年)度から、出願手続きおよび受験手数料のキャッシュレス化も開始予定となっています。
CBT試験を受ける際に気をつけること
CBT試験はコンピュータを使って受験します。
そのため、マウスやキーボードといったパソコンを操作する機器の扱いが必要です。慣れるまでは画面操作に時間がとられることや、記述式の問題ではタイピングの速度が受験の成功にかかわってくることもあるため、パソコン操作の経験やタイピングスキルが高い人ほど有利になります。
試験問題はモニタに表示されるため、ペーパーテストのように問題用紙に書き込みしたり、持ち帰ったりできません。さらに、モニタを長時間見続けることになるため、目が疲れやすいことや、人によってはスクロールが必要な問題に読みにくさを感じることもあります。
他にも、試験システムによっては、問題の一覧を見られなかったり、前の問題に戻れなかったり、問題ごとに制限時間が設けられているケースもあります。このようなシステムの場合、問題全体を俯瞰して時間配分することが難しくなります。
CBT試験導入に向けてしておくべき対策
最後にCBT試験導入に向けた、受験者の対策について解説します。
CBT試験は既に解説した通り、コンピュータを使って受験します。そのため、マウスやキーボードなどパソコン操作にかかわる基礎的なスキルが求められます。タイピングの速さが問題の進行速度を左右することもあるため、人によっては手書きよりも解答に時間がかかる可能性があります。
CBT形式の試験をスムーズに進めるためには、日常的にパソコンの操作に慣れておくことが大切です。また、試験会場では普段とは異なるパソコンを操作するため、キーボード操作や予測変換などの機能が、想定と異なる可能性があることを頭にいれておきましょう。
さらに、CBT試験ではペーパーテストと異なり、問題用紙への書き込みができません。試験会場ではメモ用紙を配布されることが一般的ですので、計算や重要ポイントの記録など、紙を使うことに慣れておくとよいでしょう。
また、試験のシステムによっては問題の後戻りができなかったり、1問ごとに制限時間が課せられていたりすることもあります。あらかじめそのようなパターンがあることを知っておくと、受験当日に冷静に対応できます。
まとめ
デジタル化推進のため、令和5年に法務省が司法試験にCBT形式を採用することを公表しました。現時点では、令和8年度からCBT形式が導入される予定です。また令和7年度から、出願手続きおよび受験手数料のキャッシュレス化も開始予定です。CBT試験を受ける際には、筆記試験と異なる点を把握しておきましょう。システムによっては、問題の後戻り不可などがあることに注意が必要です。CBT試験に向けて、パソコンの操作や、手書きのメモでの計算や重要ポイントを控えることに慣れておくことで、スムーズな受験が可能となります。